免疫について、「体の免疫を上げる」ことと「がんの免疫を上げる」こととはまったく別の問題であり、体の免疫を上げたからといって、「がんの免疫を上げる」ことには必ずしもならない。
（ ＞＞ 『 まずは結論を 』 も同時にお読みください。）
予防効果と治療効果は別物
だいたい理解いただけたでしょうか。
「体（全体）の免疫」を上げたとしても、「がんの免疫」も同時に獲得しなくては、すでに大きく育ってしまったがんに対しては、消滅はおろか、縮小させることもなかなか難しいことが分かってきたわけです。
たしかに、「体の免疫」を上げて健康な若者と同様の免疫細胞の力を回復すれば、 NK細胞やNKT細胞がしている、毎日できてくる生まれかけの小さながん細胞の排除（予防効果）はしてくれます。
しかし、免疫システムのなかでも攻撃力の強いキラーT細胞などは、がん細胞が身体にとって異物であり、攻撃対象であることになかなか気付いてくれないのです。
がん細胞は攻撃対象であると気付いてくれなければ、どんなに攻撃装備を拡充しても、日本の自衛隊と一緒で、主力部隊が攻撃に出動してくれないのです（治療効果はない）。
台風で川が氾濫したときの土のう積み（予防効果）にしか出動しないのです。
ところが、健康食品（免疫賦活食品）の多くは、この土のう積み程度にすぎない「がんの予防効果」を、あたかも、巨大組織に成長したがん帝国を強力に攻撃できる、「がんの治療効果、撃滅効果」を生み出すのだと錯覚させて、過大に宣伝しています。
「体の免疫」の「がんの予防効果」を延々と言葉を変えつつ説明して、最後に数行で「だから、大きくなったがんを治療する効果もある」と煙に巻いた結論を出します。
根拠や証拠は、「体験談」のみです。「薬事法があるから、証拠のデータは出せない」とうそぶくのです。それはまったく逆です。
そして、最後にこう畳み込んできます。「免疫は心と結びついているから」と。
信じるものは救われるから、疑いを持たず購入しなさいというわけです。
短絡的に考えないほうがいい
仮にある健康食品（免疫賦活食品）によって「体の免疫」を上げて、もともと10あったものを30に回復できたとしましょう。
（10とか20は例えであって、そのような測定単位すらないと思います）
このとき、健康食品販売サイトの多くは、「体の免疫」（予防効果）のアップした分の20が、そのまま「がんの免疫」も20アップさせるような錯覚を与えているのです。
しかし、「がんの免疫」のアップは、ほぼゼロです。
ただ、「がんの免疫」も、「体の免疫」が十分にあってこそ、より効果を発揮するのですから、「体の免疫を上げる」ことが、まったくのムダということではありません。
また、「体の免疫」のアップは、「からだ全体の底上げ」なんだから、体の一部であるがんに対しても予防効果を上回る効果を及ぼすこともあるだろうとも考えられます。
（ここが難しいところなのです。先ほどの「免疫は心と結びついている」というのすら認めざるを得ないのです。）
しかし、健康食品販売サイトのいうように、体（全体）の20アップがそのまま、がんにも20アップで効果を及ぼすと短絡的に考えないほうがいいだろうと思うのです。
しかも、そもそも「体の免疫」をアップできるかどうかすらも証明されていない健康食品が大半なのです。
たまたまごく一部の人で、その健康食品との相性がよくて（プラシーボ効果なども含めて）がんに対して10アップくらいの効果を発揮して、がんを縮小させることができた人が例外的に存在する程度なのです。
ちなみに、医療機関で行われている「体の免疫を上げる」医学的がん免疫療法の『非特異的免疫療法』でも、第3世代といわれ現在主流となっている『活性化自己リンパ球療法』ですら、その有効率は10パーセントもないであろうとされています。
（参考；『非特異的免疫療法について』）
安全性も十分に確認を
例外的事例に賭けてみようと健康食品を試してみるのもいいでしょう。
（参考； 当サイト内 「健康食品販売のビジネスモデル」）
しかし、その場合でも、少なくとも『そもそも「体（全体）の免疫」をアップできるものなのか』から順にデータを重視して検証してみることを忘れないで、冷静に判断することをおすすめします。
その際、「安全かどうか」についても十分に注意する必要があります。
βカロテンもサプリメントで高濃度に摂取するとがん死亡率を上げるなど、注意情報が出ているものもあります（野菜などから適量摂取するのはよいようです）。
「天然素材を使っているから体にやさしくて安全」などというのも神話にすぎないというのが医学の常識です。
最後に、「数ヶ月で末期がんが消滅」についての考察もお読みください。