ホームがんに効く!!健康食品販売の実情 > 健康食品の科学的証拠は?−アガリクスを例に

健康食品の科学的証拠は?−アガリクスを例に

厚生労働省のアンケート調査

 2005年の厚生労働省の研究班によるアンケート調査によると、がん患者の約半数が『補完代替医療(西洋医学以外の治療)』を利用しており、その内の約96%が「健康食品を摂取している」ことが明らかになりました。
 また、その購入費用が、1ヶ月あたり平均56,000円。これはビタミンなどのサプリメント利用者を含んでの数値であり、10万円を超える人も2割いることも分かりました。
 さらには、全体の60%を超える方が、主治医に相談できないまま使用しているという結果も得られたのです。
 健康食品・サプリメントの内訳(2005年)では、アガリクスが60.6%と報告されています。 そこでアガリクスを例に、健康食品の科学的証拠はどうなっているかを調べてみたいと思います。

PageTopに戻る

アガリクスの科学的証拠は?

 アガリクスを含むキノコには、他の食物に比べて多糖類と呼ばれる物質が比較的多く含まれています。多糖類のうち、βグルカンが私達の持つ免疫のメカニズムに作用するらしいということもいわれています。
 ただし、あくまで「らしい」であり、しかも実験は、試験管とかの研究施設の中(培養細胞)もしくは実験動物で、かつ純粋・高濃度な成分を使ってなされた研究です。
 成分を一部含む「健康食品」を人が食べて作用が確認されたといったものではけっしてありません。
 2008年3月現在で、アガリクスを人体に直接使用するヒト臨床試験等の医学論文は、化学療法中の副作用を軽減する効果があったというものと、アガリクスが原因と思われる深刻な肝機能障害などの健康被害の症例報告、そしてアガリクスをすでに利用している患者さんへのアンケート調査の3本だけだそうです。

 そんななか、アガリクスなどのキノコ系の免疫賦活健康食品を販売するサイトが、しきりに取り上げているものに、「βグルカンでネズミのがんが縮小した」という実験報告があります。
 しかし、この実験で、βグルカンが「がんの免疫」を上げた証明には、残念ながらなっていません。
 以下、説明します。

 第1回テーマ『 免疫に作用する健康食品等の効果 』の中の記事 『免疫とは何か』で書いていますが、免疫は、『自己』か、それとも『非自己』かというごく単純な判断によって、『非自己』を排除するシステムです。
 この実験は、ネズミの体にヒト(人)のがん細胞を接種して行った実験です。
 ネズミにとって、ヒトの細胞は、まったくの『非自己』です。『非自己』なら免疫システムは攻撃をするのです。 仮にがん細胞ではなく正常細胞を接種して行ったとしても、それがヒト(人)の細胞である限り『非自己』として免疫システムは攻撃をしていたはずです。
 「がん細胞」だから作用した(攻撃した)わけではないのです。
 つまり、この実験でβグルカンが「体の免疫」を上げる可能性はあると証明できたものだとしても、それが「がんの免疫」を上げて、がん細胞を攻撃力を高めたという証明にはまったくなっていないのです。
   (参考:当サイト内 「体の免疫」と「がんの免疫」は別物

 そのうえ、培養細胞もしくは実験動物での実験結果が、ヒト(人)に対して同様の結果を生むと考えてはいけないことは、医学上、自然科学上の常識です(ヒト臨床試験が不可欠)。
 しかも、今回はネズミにβグルカンを体内組織に直接注射で投与して行った実験です。 βグルカンをヒトが口から食べて効果があるかどうかは、「体の免疫」についてでさえまったく証明されていません。
 仮に高濃度資料を用いて実験器具内の培養がん細胞を殺せたとしても、「健康食品」として口から食べたときに人の体内に吸収されて、体内でがん細胞を殺せるくらいの濃度にならなければ意味がないのです。

 さらに言ってしまえば、この実験は学会発表レベルの研究にすぎません。
 学会発表レベルの研究とは、「私がやってみたらこうなったよ。」という報告でしかなくて、第三者による厳密な審査を受けたものではないのです。 その同じ会合でまったく正反対の結果の研究が発表されても、まったく不思議はないのです。
 もしこれが、(先ほど出てきたような)医学専門誌に掲載された研究報告(医学論文)ならば、第三者による厳密な審査を受けたものとして、一般的に科学的な信頼性は高いものといえます(もちろん専門誌のレベルによりけりです。たんなる症例報告もあます)
 しかし、世界で900万通ともいわれる医学論文に、健康食品が生きている人間のがんに対して縮小効果や患者の延命効果を証明した論文はただの1本もないということです。

 健康食品の科学的証拠といっても、この程度でしかないのです。
「この健康食品はがんを予防・治療できる」ということが、ヒト臨床試験で、しかも口から食べたときに証明されなければ、それはあくまでも仮説でしかありません。

フコイダンについてもひとこと

 多くの販売サイトがフコイダンは「がん細胞にアポトーシスを誘導する」と宣伝しています。
 しかし、「がん細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導する」というのは、抗がん剤にも匹敵するかなり攻撃的な作用です。副作用も心配になります。
 それにもかかわらず、フコイダンについて(ヒト臨床試験はおろか)安全性や毒性に関するデータもろくにないというのは、たいへん危険なことです。
  (ここで「天然素材を使っているから体にやさしくて安全」ですませる業者は、その時点で信用から外れます)。

 それなのに問題とならないというのは、裏を返せば、ヒトが口から食べる「健康食品」としては、そこまでの濃度には達しないということを意味しているのではないでしょうか。
 日本癌学会で発表された培養細胞の実験でがん細胞がアポトーシスを起こす濃度と、「健康食品」として食べて吸収できるフコイダンの濃度はまったく違うのです。
 また、もし仮に「健康食品」としてそれだけの吸収濃度を維持できるとすれば、それはそれで危険なことです。 安全性や毒性に関するデータをきちんと示しているか確認しなければなりません。

PageTopに戻る

がんに効く!!健康食品販売の実情 INDEX

がんに効く!!・・のか???

健康食品販売の実情
ご利用に際して

広  告
inserted by FC2 system